まず最初に、「実現主義」と「現金主義」
について簡単に確認しておきます。

両方とも「収益や費用がいつ生じたか」
との考え方(会計処理のしかた)で、
どちらの考え方を採るかで、
記帳のしかたが変わってきます。

収益の計上は実現主義で

青色申告では原則、実現主義で
収益を計上することになっています。

実現主義で収益を計上するとは?

収益は商品(サービス)が提供され、
請求金額が確定した時点で計上する

という考え方です。


例:
アフィリエイト報酬5万円が6月30日に確定し、
8月15日に実際に銀行口座に支払われたとします。

実現主義で計上すると、記帳はこうなります。

6/30【借方】売掛金 50,000円|【貸方】売上 50,000円

8/15【借方】預金50,000円|【貸方】売掛金50,000円

現金主義で収益を計上するとは?

収益は現金の受け渡し時
(お金を受け取ったとき)に計上する

という考え方です。

例:
アフィリエイト報酬5万円が6月30日に確定し、
8月15日に実際に銀行口座に支払われたとします。
(実現主義の例とまったく同じ条件です)

現金主義で計上すると、報酬が確定した時点
(6月30日)では仕訳は行いません。
まだ現金が支払われていないからです。

報酬が口座に振り込まれた(実際に支払われた)
時点で、「売上」が発生したと考えます
(売掛金ではない)。

記帳すると
8/15【借方】預金50,000円|【貸方】売上50,000円

となります。

しかし、青色申告では基本、売上(収益)は
現金主義で処理をしないことになっています。

売上(収益)は実現主義で会計処理します。

現金主義のほうが仕訳が少なくてラクなのに。
残念です・・・。


アフィリエイト報酬の仕訳の具体例

アフィリエイト成果が発生した時点では、
キャンセルや広告主に否認される可能性も
あるため、仕訳はまだしません。

アフィリエイト報酬が確定しても、
各ASPによって最低支払額というものがあり、
報酬が最低支払額未満だと、まだ口座に
振り込んでもらえません。

よってこの時点でも、まだ仕訳をしなくて
かまいません。

アフィリエイト報酬が最低支払額を超えたとき

ようやくここで売上実現の仕訳をします。

〇/△【借方】売掛金 ○○○○円|【貸方】売上 ○○○○

アフィリエイト報酬が実際に振り込まれたとき

△/〇【借方】預金 ○○○○円|【貸方】売掛金 ○○○○


アフィリエイト報酬が振込手数料を
差し引いた残額が振り込まれたとき

アフィリエイト報酬5万円が6月30日に確定し、
振込手数料50円を差し引いて8月15日に
4万9,950円が銀行口座に振り込まれたとします。

6/30【借方】売掛金 50,000円|【貸方】売上 50,000円

8/15【借方】預金49,950円|【貸方】売掛金50,000円
8/15【借方】支払手数料50円|【貸方】売掛金50

売掛金のうちの50円が預金には入金されず、
手数料として充当されたということです。



経費の計上は現金主義でしてもよい

「現金主義」で経費を計上するということは、
経費は現金や預金で支払いを済ませた時点で
計上するという考え方です。

アフィリエイターやブロガーの経費は、
収益と違い、現金主義で処理します・・・。

なぜなら、青色申告の手引き
【「令和元年分の確定申告に関する手引き等
⇒「41.令和元年分青色申告の
決算の手引き(一般用)」より】
に、現金主義で処理してよいと、
書いてあるからです!

たとえば、「未払経費」についてみてみます。

未払経費|本年中に実際に支払った経費だけでなく、例えば、本年分の地代家賃などで未払のものは、未払経費になります。
※ 少額な経費については、未払の整理をしないで、実際に支払った金額だけを必要経費にしても差し支えありません。
「少額な経費」という条件はありますが、
未払経費については、現金主義で処理してもよい
ということです。


「少額の未払経費」の仕訳の具体例

たとえば後払いのスマホ料金。
12月のスマホ料金の支払いは翌1月ですが、
通信サービスはすでに12月に受けています。

スマホ料金の金額は人それぞれでしょうが、
おそらく事業で使うスマホ料金が
10万円を超すということはないでしょうから、
「少額の経費」に当たると考えます。

※「少額減価償却資産」の基準が10万円以下のため
少額=10万円以下と考えます。


さらに12月料金は12月の時点ではまだ
料金が引き落とされないので、
「少額の未払経費」になります。


少額の未払経費を現金主義で計上したとき

税務署の手引きによると、

少額な経費については、未払の整理をしないで、実際に支払った金額だけを必要経費にしても差し支えありません。

とのことなので、12月に支払っていない
スマホ料金は記帳しなくてOK。

つまり、「現金主義」(経費はお金を
支払った時点で発生する)を採用して
よいのです。

そのため、「現金主義」を採用した場合、
未払いのスマホ料金は、サービスを受けていても
仕訳はしません。


少額の未払経費を実現主義で計上したとき

これがもし、「実現主義」で記帳するなら

12/31 通信費 ○○○円|未払費用 ○○○円

のように、未払費用を使った仕訳を
12月の日付でしなくてはなりません。

でも、「現金主義」を採用してよいので
こんな仕訳をしなくてもよいのです。

「実現主義」より「現金主義」のほうが、
仕訳が少なくて済むので、ラクです。

次は、「前払経費」について。

税務署の手引きより

前払経費|本年中に支払った経費の中に、翌年分以後の期間に対応する部分が含まれている場合は、その部分の金額は本年分の必要経費にはなりません。
※ 本年中に支払った金額が1年以内の期間のものであるときは、そのまま本年分の必要経費 にしても差し支えありません。


「1年以内の期間のもの」という条件はありますが、
前払経費についても、現金主義で処理してもよい
ということです。

1年以内の期間の前払経費を現金主義で計上したとき

たとえば、
6月15日に7月1日以降1年分のレンタルサーバー料金
をレンタルサーバー会社に振り込んだとします。

ですが、20,000円のうち
半分の10,000円は、
今年7月1日から12月31日分の料金、
残り10,000円は
来年1月1日から6月30日分の料金です。

来年分のサービスの提供は
今年は受けません。
けれど来年の料金の支払いは
本年に済ませてしまっているという例です。

なんか複雑な仕訳をしなくてはならない
のかと心配になりますが、
税務署の手引きにより
本年中に支払った金額が1年以内の期間のものであるときは、そのまま本年分の必要経費 にしても差し支えありません。
とあります。

なので、来年のサービスに支払った費用も
本年分の必要経費として記帳します。

こんなふうでOK。

6/15 通信費20,000円|預金20,000円


「現金主義」を採用してよいので
来年の費用も含めたこのような仕訳で
よいのです。

1年以内の期間の前払経費を実現主義で計上したとき

これが「実現主義」だと、
来年の1月1日から6月30日分の
レンタル・サーバー料金については
本年の経費として計上できません。

年末に以下のように修正仕訳をしなくては
ならなくなるのです。

12/31 前払費用 10,000円|通信費 10,000円

通信費20,000円のうち来年分の10,000円を
前払費用という債券に修正する仕訳です。

でも、「現金主義」を採用してよいので
こんな仕訳をしなくてもよいのです。

「実現主義」より「現金主義」のほうが、
仕訳が少なくて済むので、ラクです。

ブロガー・アフィリエイターの経費は
ほとんど「1年以内の期間の前払費用」か
「少額未払費用」にあたるので、

どうせなら「現金主義」にしちゃいましょう。